静電式MEMSガスセンサの開発

陳 浩, 岩淵 滉明, 森本 賢一

概要

 近年,無線センサネットワーク技術の急速な進展に伴い,携帯型の高性能ガスセンサに対する期待が高まっている.ガスクロマトグラフィーシステムは,高精度なガス分析技術として環境モニタリングや食物検査への応用,生体医療分野における非侵襲診断・モニタリング手法としてへの応用が進められている.また,様々な施設におけるテロ対策や高い環境安全性を確保する観点から,毒ガス分析装置の汎用性・携帯性の向上に対する需要が高まっている.携帯性に優れた低消費電力の小型ガスクロマトグラフィーシステムを開発することで,従来型デスクトップサイズの計測技術の飛躍的な簡便化とIoT社会に適合したユーザビリティの向上が可能になるものと期待される.
 本研究では,ポリマーを用いた静電容量変化型MEMSガスセンサに着目し,ポリマー材料,電極構造設計の観点から従来試みられた例のない新たなアプローチに基づき,ガスクロマトグラフィー応用に適した高感度ガスセンサを開発することを目的としている.まず,基礎的な材料特性評価に基づき,化学気相蒸着(CVD)に適合したパリレンEの有する特異的な揮発性有機化合物(VOC)センシング特性を初めて見出し,系統的な実験的評価および現象論的考察を通じてパリレンE薄膜における膨潤を伴う物質拡散特性を明らかにしてきた.さらに,パリレンEを成膜した高アスペクト比電極構造を用いた新規性の高い静電容量型VOC検出器をMEMS技術により試作し,マイクロガスクロマトグラフィーにおける有用性を実証した.今後,ガスセンシング特性のさらなる高性能化とともに,無線システムへの実装を目指した研究を進めることを予定している.

MEMSガスセンサ・プロトタイプ (Yeh et al., 2017)

パリレンEを成膜した高アスペクト比電極構造 (Yeh et al., 2017)

プロジェクト: 公益財団法人JKA補助事業 [研究代表者:森本 賢一] 

主な共同研究者:
 Yogesh Gianchandani(University of Michigan, Ann Arbor, USA)

最近の発表論文

レビュー・解説

  • Morimoto, K.,
    “Parylene-Based MEMS VOC Detector for Mobile Gas Chromatograph Applications,”
    Invited talk, 2018 IEEE Int. Conf. on Cyborg and Bionic Systems (IEEE CBS 2018), Shenzhen, China, Oct. 26, 2018.

MEMSガスセンサの開発

  • Yeh, C.-H., Zhao, X., Qin, Y., Gianchandani, Y.B., Suzuki, Y., and Morimoto, K.
    “Deep Electrode and Parylene E-Based Capacitive VOC Detector for Micro Gas Chromatograph Application,”
    Transducers’19, Berlin, 2019. (to be presented)
  • Yeh, C.-H., Suzuki, Y., and Morimoto, K.,
    “MEMS Gas Sensor Using Parylene E and High-Aspect-Ratio Electrode Structure for High-Sensitivity VOC Detection,”
    9th JSME-KSME Thermal Fluid Eng. Conf. (TFEC9), Okinawa, TFEC9-1617 (2017)
  • Morimoto, K., Qin, Y., and Gianchandani, Y. B.,
    "Modeling and Characterization of the Transient Performance of a Gas Detector Based on Fringe-Field Capacitance,"
    Proc. IEEE Sensors 2014, pp. 1843-1846 (2014).

最終更新: 2019-04-03